メディカルトリビューン
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赤外線レーザー治療が外傷性脳損傷に有効
米・Massachusetts General HospitalのMaria G.F.Longo氏らは、外傷性脳損傷(TBI)患者68例を対象に経頭蓋低出力近赤外線レーザー照射療法(LLLT)の有効性と安全性を検討する単施設の二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化比較試験(RCT)を実施。有害事象の発現はなく、脳で測定可能な治療効果が認められたとJAMA Netw Open( 2020;3:e2017337 )に発表した。TBIに対するLLLTによる有効性について、さらに大規模なRCTの実施が期待されるとしている。
施行3カ月後に神経反応性を示唆
TBIの年間発生件数は約6,900万件と推定されるが、有効な治療法は確立されていない。LLLTは主に脳卒中患者に対する治療として検討されてきたが、前臨床研究でTBI後のLLLTが神経保護反応をもたらすことが示唆されている。
今回のRCTの目的は、TBI患者へのLLLTの実現可能性と安全性、定量的MRI解析と神経認知評価に基づくLLLTの神経反応性を評価することであった。
2015年11月~19年7月、急性および非浸透性の中等度TBI患者68人をLLLT群(33人)とシャム治療群(35人)にランダムに割り付け、外傷後72時間以内に特殊なヘルメットを用いていずれかの治療を施行した。MRIは急性期(72時間以内)、亜急性期早期(2~3週間)、亜急性期後期(約3カ月後)に実施。6カ月後には16の質問項目から成るRivermead Post-Concussion Questionnaire(RPQ)を用いて神経認知評価を行った(各項目0~4点、0点は問題なし、4点は重度の問題あり)。
主要評価項目は、治療後7日以内に有害事象のなかった患者数とした。副次評価項目は、MRIによる脳拡散パラメータに基づくLLLTの特異的影響とRPQスコアとした。
68人中28人が1回以上のLLLTセッションを終えた。LLLTに関連する有害事象の報告はなかった。43人(LLLT群19人、偽治療群24人)が少なくとも1回はMRI検査を受け、試験を完了。完了者の51.2%が男性で、平均年齢(標準偏差)は50.49(17.44)歳だった。
分析の結果、3カ月後の脳における白質路の拡散パラメーターである放射拡散係数(RD)、平均拡散係数(MD)、異方性比率(FA)に両群で有意差が認められ、LLLTの施行による神経反応性が示唆された。また、LLLT群はシャム治療群より6カ月後のRPQスコアが低下していたものの、有意差はなかった。
治療法が限られた脳障害における有望な研究分野
今回、LLLTは全TBI患者に実行可能で、有害事象は発現しなかった。さらに、LLLTがTBIの亜急性期後期の神経基質に影響を与えたことが示唆された。
これらの結果を受け、米・Boston UniversityのMargaret Naeser氏は「経頭蓋レーザー療法は有望な研究分野であり、治療法が限られているさまざまな脳障害に対して効果を発揮する可能性を秘めている」と述べている。(陶山慎晃)
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