メディカルトリビューン
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新型コロナによる過食が深刻な集団とは 米・C-EAT研究
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大によって在宅時間が長くなり、つい食べ過ぎて体重が増加した人は少なくないだろう。そうした中、過去に自身の体重に関する偏見や差別(スティグマ)を受けた経験がある成人若年者では、COVID-19流行期に過食に走るリスクが有意に高かったとの研究結果を、米・University of ConnecticutのRebecca M.Puhl氏らが明らかにした。結果の詳細はAnn Behav Med( 2020年9月10日オンライン版 )に掲載された。
43%がスティグマを経験
肥満または健康障害を有する人では、自身の体形や体重をからかわれた経験がしばしば見受けられる。 COVID-19流行下における肥満と合併症の関連が指摘されているが、体重に関するスティグマの経験がCOVID-19流行期の健康障害に影響を及ぼすかは明らかでない。
Puhl氏らは、過去に体重に関するスティグマを受けた経験がCOVID-19流行期の摂食行動、心理的苦痛、身体活動の予測因子になりうるかを検討した。
対象は、2010~18年に米国で実施されたEating and Activity over Time(EAT)研究の参加者のうち、17~18年のデータを有する1,568人。COVID-19流行期にオンライン調査を行い584人(37%、女性64.2%、平均年齢24.6歳、平均BMI 28.2)から有効回答を得た。COVID-19の流行前に、自身の体重をからかわれた経験を有する割合は43%で、性による有意差はなかった。
BMI値にかかわらず健康障害への有意な影響
調査内容はCOVID-19流行期における<1>ストレス・気分の状態<2>過食<3>身体活動―への影響とした。 何かしらの影響があったと回答した割合は、ストレス・気分の状態が37%、過食は47%、身体活動は40%だった。大いに影響したとの割合はそれぞれ47%、28%、46%だった。
次に、COVID-19流行前に体重に関するスティグマの経験を有する者と有さない者で比較した。解析の結果、経験を有さない者に比べ有する者では、COVID-19流行期の抑うつ症状が有意に多く(予測回帰モデルによる係数0.15、P<0.001)、ストレス(同0.15、P=0.01)、対処法としての摂食行動(同0.16、P<0.001)も有意に多かった。
その一方で、身体活動に有意差はなかった(予測回帰モデルによる係数-0.02)。
スティグマの経験を有さない者に対する過食のオッズ比(OR)を算出したところ、経験を有する者で2.88と有意なリスクの上昇が示された(P<0.001)。
BMI値を調整後も経験を有する者ではいずれの項目も有意にリスクが高く(抑うつ症状:P=0.001、ストレス:P=0.001、対処法としての摂食:P=0.001、過食行動:P=0.001)、Puhl氏らは「過去に体重をからかわれた経験は、BMI値にかかわらずCOVID-19流行期の抑うつ、過食行動の予測因子である」と指摘した。さらに流行前の過食を調整後も、過食に対するスティグマ経験の有意な影響が見られた(OR 2.41、P=0.002)。しかし抑うつ症状、ストレス、身体活動については有意な関連がなかった。
以上を踏まえ、同氏らは「体重に関するスティグマを経験した若年成人では、COVID-19流行期に苦痛を感じたり不適切な摂食行動に走るスクが増大している可能性がある」と警鐘を鳴らしている。(田上玲子)
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