メディカルトリビューン
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ASD児は就学前の消化器症状が3倍
自閉症スペクトラム障害(ASD)児では消化器(GI)症状が頻繁に報告されているが、その有病率や機能障害への影響など不明な点が多い。米・University of CaliforniaのBibiana Restrepo氏らは、就学前のASD児および年齢を一致させた定型発達児を対象に、GI症状、発達、行動および適応機能などを評価した結果、GI症状は就学前の小児の問題行動と関連しており、特にASD児ではGI症状を発症する頻度が定型発達児の約3倍に上ることなどを、Autism Res( 2020年8月6日オンライン版 )に発表した。
2~3.5歳の小児約400例を評価
研究対象は、2~3.5歳のASD群255例(男児184例、女児71例)および年齢を一致させた定型発達群129例(男児75例、女児54例)。自閉症を専門とする小児科医が病歴聴取および身体検査を含む医学的評価の際に保護者と面接し、質問票を用いて児のGI症状(腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘、排便時痛、嘔吐、嚥下困難、下血または吐血)の経験の有無と頻度を聴取、GI症状と発達および適応機能、問題行動との関連を検討した。
ASD児はより多くのGI症状を経験
GI症状の頻度は定型発達群の17.8%に比べASD群では47.8%と有意に高かった(P<0.0001)。両群で最も頻繁に経験されたGI症状は下痢、便秘、腹部膨満感であった。
ASD群は定型発達群に比べより多くのGI症状を経験しており、複数のGI症状を経験しているのは定型発達群では5.4%であったのに対しASD群では30.6%であった(P<0.0001)。
Restrepo氏は「ASD児では約半数が下痢や便秘、腹部膨満感などのGI症状を頻繁に経験しており、GI症状を経験するリスクが定型発達児の2.7倍であることが分かった」と強調している。
小児は不快感を問題行動として表現
ASD群と定型発達群を、それぞれGI症状を経験した群と経験していない群に分けると、ASD群、定型発達群ともにGI症状経験の有無で、発達機能および適応機能に有意差はなかった。
しかし、GI症状があるASD児、定型発達児はいずれも自傷行為、制限されたステレオタイプの行動、攻撃的行動、睡眠の問題および注意力の問題などの問題行動を抱えていた。
Restrepo氏は「問題行動が就学前児のGI不快感を表している可能性を示唆している」と指摘。
特にASD児では問題行動が深刻
GI症状はASD群、定型発達群いずれでも問題行動の増加と関連していたが、ASD群では定型発達群よりも全体的に深刻な問題行動が多く見られた。
また、ASD群ではGI症状の数が多いほど、自傷行為、身体的不調の訴え、睡眠時間減少および睡眠時随伴症が増加していた。
Restrepo氏は「ほとんどのGI症状は治療可能であり、ASD児にどの程度GI症状があるかを確認し治療することが重要である。GI症状が改善すれば、児や保護者にQOLの改善がもたらされる可能性がある」と述べている。(宇佐美陽子)
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