サイエンス

記憶の「関連付け」を行うことでささいなことをキッカケに出来事全体を思い出せるようになる


大切な人の誕生日や電話番号など、大事な情報は長期にわたって脳内に保存されますが、忘れないように長期にわたって記憶し続けるには、定期的に思い出すことで記憶を強化しなければなりません。カリフォルニア大学デービス校の研究者が、「情報はエピソード的に関連付けされて記憶され、ささいなことでも思い出すと、関連付けされた記憶も同時に強化される」という研究結果を発表しています。

Neural reactivation in parietal cortex enhances memory for episodically linked information | PNAS
http://www.pnas.org/content/115/43/11084


Recalling memories in context
https://medicalxpress.com/news/2018-10-recalling-memories-context.html


人は思い出すことでその記憶を強化することができるといわれていますが、記憶強化の神経的・認知的メカニズムはいまだ解明されていません。その仮説の1つとして、「脳内では情報が文脈を持って関連付けられている」というものがあります。

人間の記憶のプロセスは、情報を取り込んで記憶情報に変換する「記銘(符号化)」、記憶情報をとどめるための脳神経ネットワークを形成する「保持(貯蔵)」、そして情報を再度取り出す「想起(検索)」の三段階が基本となっています。カリフォルニア大学デービス校の研究者たちは、「想起」によって記憶が強化されることを確かめる2つの実験を行いました。


第一の実験では、被験者を二つのグループに分けて、以下の画像のような「光景」と「物」のペアを被験者に覚えさせ、次の日に「光景」を見せて対となる「物」を思い出させました。ただし、片方のグループでは思い出す作業を1回だけ、もう片方のグループでは3回行われたとのこと。すると、3回思い出したグループの方が1回思い出したグループよりも記憶が強化されていたことがわかりました。


続いて研究チームは、被験者に記憶を思い出してもらいながら、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を利用して、脳の活動を監視するという実験を行いました。すると、記憶を想起している時、人間の脳の中でもエピソード記憶に関連している頭頂葉領域で神経ネットワークが活性化していることが判明しました。

このことから、人間は記憶情報を関連付けて「エピソード的な文脈」を作り、この文脈をもとに記憶の検索や強化を行っていると研究チームは論じています。また、研究チームは、こうした記憶のメカニズムを解明することで、学習能力・認知能力の改善や健忘症患者の記憶を強化する方法に役立たせることができるのではないかと考えています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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