少女たちが科学技術に興味をもつカギは、ロボットが握っている? 米大学の研究で明らかに

科学やエンジニアリングなどの職に就く女性の比率が少ないという米国。少女のうちから科学技術に興味をもつきっかけを、ロボットがつくるかもしれないという研究結果が明らかになった。
少女たちが科学技術に興味をもつカギは、ロボットが握っている? 米大学の研究で明らかに
PHOTOGRAPH COURTESY OF WONDER WORKSHOP

残念な統計がある。米国のエンジニアのうち女性が占める割合は、たったの12パーセントだ。コンピューティングになると少しはよくて26パーセントを女性が占めているが、この数字も1990年の35パーセントから下落している。

科学・技術・工学・数学(STEM)職に就いて働き続けようとする女性の支援に関して、米国社会には問題がある。シリコンヴァレーやその他の雇用主は、この最大の責任を負っている。明白なものも微妙なものも含めて差別があり、女性が職に就くことを排除している。

しかし、われわれの社会もまた性別による固定観念をもち続けており、それが両親から子どもへと伝わっている。例えば、少年は少女よりも物を組み立てるのが好き、といった類いのものだ。

こうした厄介な問題に対する唯一の解決策などないが、意外な解決策がある。それはロボットだ。ロボットが職場に多様性をもたらしたり、すべての仕事をこなしたりしながら完全にジェンダーの概念を取り除くという意味ではない。ロボットによってSTEMに関心をもつ少女が増えるという意味での解決策だ。

具体的に言えば、子ども用のロボットキットである。これらは、子どもたちにエンジニアリングやコーディングをどう扱うか教えるための、単純だが強力なおもちゃだ。

PHOTOGRAPH COURTESY OF VAIDAS SIRTAUTUS

子どもたちに科学やエンジニアリングに興味をもたせることに焦点を当てたおもちゃは、多数存在する。最近では、その多くは対象となる性別が特定されている。例えば「Roominate」は少女向けに作られた工作キットだし、「Boolean Box」は少女にコーディングを教える商品だ。

タフツ大学で人間発達を研究するアマンダ・サリヴァンは、「少女用には特別な『Lego』が必要だといった考えや、興味をもたせるには色がピンクや紫であるべきだといった考えを、わたしは不快に感じます」と述べる。「ピンクや紫のツールが少女の関心をひくのであれば、それはそれで結構です。しかし、すべての子どもに向けたツールや書籍、品物がより多く揃っていれば、一般的にはそのほうが素晴らしいと思います」

「中立」なロボットに対する子どもたちの反応

そこでサリヴァンは、「Kibo」という、特に性別とは関係ないロボットキットの効果をテストすることに決めた。子どもたちは特定のコマンドが表示されたブロックをつなげることで、Kiboの動きをプログラムする。男性的もしくは女性的といった固定観念的なマーキングを使わず、少年用もしくは少女用と特定してマーケティングされているわけでもない製品だ。中立だと言える。

Kiboで遊ぶ前、少年は少女よりもエンジニアであることを楽しんでいると発言する傾向が明らかだった。遊んだあとでは少年の意見は変わらなかったが、少女も少年と同様の割合でエンジニアリングへの興味を示した(Kiboで遊ばなかった対照群では、少女の意見に明らかな差異は出なかった)。

「一般的にロボットは、男の子にとっても女の子にとっても、小さい子どもたちにとって目新しいものです。Kiboのようなロボットキットは、特に少女を惹きつけるどうかかはさておき、熱気や目新しさを教室に持ち込み、子どもたちを学ぶことに夢中にさせると思います」とサリヴァンは語る。

しかし問題もある。サリヴァンの研究では、性別を特定しないロボットキットはエンジニアリングに対する少女の興味をひくが、だからといって商品が売れるわけではない。

「売上データを見てみると、少女が遊んでいるわけではないことが明らかです」と語るのは、SmartGurlzの共同創設者でもあるシャーミ・アルブレックツェン最高経営責任者(CEO)。同社では、自分でバランスをとりながらスクーターに乗る、プログラミング可能な人形を製造している。

「ジェンダー中立とされるおもちゃであれ、売り上げデータを見てみれば少年に偏りがちなのは明らかです。それが現状なのです」と、アルブレックツェンは言う。性別は製品の売れ行きに影響する。少なくとも、両親が購入する場合はそうだ。

子どもたちが「遊び」に抱く先入観

それにもかかわらず、意図的に新世代のおもちゃをつくり出そうとしている企業もある。Wonder Workshopという企業は、性別を意識していないロボット「Dash」と「Cue」が試作段階だったとき、少年と少女の両方にそのデザインを試してみた。Wonder Workshopの共同創設者であるヴィカス・グプタCEOは、「少女たちが語った多くの感想のひとつは、自分たち向けのおもちゃではない、ということでした。この製品で遊ぶのはおそらく兄や弟だということです」

それはなぜか。つまり少女は、このおもちゃがクルマやトラックに思えたのだ。そのため同社は車輪を隠すようにした。「すると突然、少女たちが遊びたがるようになりました。大きな意味でここから学んだことは、すべての子どもたちは遊びに先入観をもっているということです。子どもたちは何かを見ると、それ以前に目撃した何かと関連づけるのです」

これは必ずとは限らない。スクーター人形を手がけるSmartGurlzのアルブレックツェンは、「面白いことに、実際にわれわれが発見したことは、多くの少年が次第に近づいてきて遊びたがったことです。スクーター人形で遊ぶ多くの兄弟たちがいるのです」と述べる。

何が子どもの興味を引くとしても、そのひらめきを確実に生かすのは、両親と教育者だ。そしておそらく、ますます洗練され、ますます素晴らしく、ますます安価なロボットが、米国で女子を科学や技術系に進ませる道に転換し始めることだろう。ロボットが自己認識したり世界を支配したりといったことが懸念されているが、こうしたロボットが害を与えることがないのは確かだろう。

TEXT BY MATT SIMON

TRANSLATION BY CHIEKO NAKAMURA, HIROKO GOHARA/GALILEO