脳を知る

脳血管性認知症 脳卒中の繰り返しで出現

脳血管性認知症になると、感情のコントロールがうまくできなくなる
脳血管性認知症になると、感情のコントロールがうまくできなくなる

 「それまではおとなしい性格だったのに、急に怒ったり、泣いたりするようになったのです」

 70代の男性が最近物忘れがひどく、怒りっぽくなったという症状で娘さんと物忘れ外来を受診されました。認知機能を調べる検査「MMSE」では30点満点中24点と軽度の物忘れがあり、脳のMRI(磁気共鳴画像装置)では古い脳梗塞と新しい脳梗塞がみられ、今回新しく脳梗塞になったために物忘れがひどくなったのでした。1週間入院して点滴治療をしたところ、物忘れは少し改善し、怒りっぽかった症状も少しは落ち着いて退院されました。

 このように脳梗塞、脳出血や、くも膜下出血など脳卒中を繰り返すことで出現するのが「脳血管性認知症」です。アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症といわれます。アルツハイマー型が徐々に進行するのに対し、脳血管性認知症は脳卒中を生じるたびに症状が悪化するので、段階的に進行するのが特徴です。

 原因の多くは動脈硬化で、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙が動脈硬化の危険因子です。最近では、不整脈の一つである心房細動も原因になるといわれています。

 症状は脳梗塞や脳出血が起こった場所によって違い、言葉の領域だと話し方が不安定になり、計算の領域だと計算が苦手になります。障害を受けていない領域の働きは保たれるので、「まだら認知症」と表現されます。ぼーっとした状態のときと調子のいいときと、一日のうちでも変化することがあり、そういった意味でもまだら認知症と呼ばれます。

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