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生活困難者見つけ支援

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川崎市のセンター、関係機関や地域と連携

 

生活困難者見つけ支援

たじま家庭支援センターで職員(右)に、体調などを相談する30歳代の女性。「丁寧に耳を傾けてくれる」と話す

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 介護や子育て、貧困などで苦しみながらも、役所や専門機関に相談できずにいる人を見つけ出し、支援する活動が広がりつつある。関係機関や地域住民と連携して、どんな困りごとでも相談に乗るのが特徴だ。川崎市川崎区田島町の「たじま家庭支援センター」を訪ねた。

  ■大切な「居場所」

 「ここに来て、職員さんに体調のことなど相談に乗ってもらうと、気持ちが落ち着く。私の大切な“居場所”です」。同センターの近くに住む30歳代の女性は笑顔を見せた。

 対人恐怖や音に過敏に反応する症状があり、長期間、外出ができなかった。福祉関係の仕事をしている知人の勧めで半年ほど前、同センターに電話してみた。「体調のいい時に気軽に来てください」という職員の呼びかけに背中を押され、訪問。以来、週1、2回、職員と20分ほど話をする。

 苦手だった外食にも、母と一緒に行けるようになった。女性は「病院の心理相談は予約が必要で、私にはハードルが高い。このセンターができて本当によかった」と話す。

 同センターは2016年4月、「かわさき障害者福祉施設たじま」内に開設された。社会福祉法人「川崎聖風福祉会」が、川崎市から年間約1800万円の委託費を受け、運営している。職員は、社会福祉士や臨床心理士など4人。無料で相談に応じるほか、自宅訪問にも力を入れている。市役所の担当部署、高齢者や子育ての支援機関などとも連携する。

  ■情報を共有

 また、センターでは月1回、一人で晩ご飯を食べる子どもなどに居場所を提供する「こども食堂」を開き、調理などを手伝うボランティアの大人たちも来る。併設の交流スペースでは、趣味のサークルなどが活動。どちらも、地域住民が集う場となっている。

 江良泰成センター長(57)は「地域の人たちの会話から、支援を必要としている人が見つかることがある」と強調する。交流スペースの利用者が「近所に引きこもりの人がいて心配」と話したことから、職員が自宅を訪ねたこともあった。

 また、月1回、川崎区内の介護施設や病院、市役所などの関係者が集まり、情報を共有している。要介護の高齢者を訪ねたケアマネジャーから、「同居の次女夫婦がともに障害者で、子育てに苦労している。長女が一家を支えているが、疲れ切っている」との情報が寄せられ、支援につながった。

 川崎聖風福祉会の中沢伸理事(53)は、「長女が倒れたら大変なことになっていた。介護、障害、子育てなど複数の課題を抱えている世帯も少なくない。家庭全体を見ないと支援が遅れてしまう」と話す。

厚労省、普及へ20億円補助

 

 地域の協力を得て、様々な相談を受け止め支援する取り組みは、大阪府豊中市や三重県名張市などでも行われている。厚生労働省は今年度、86市区町村に計20億円を補助し、普及を図る。

 背景には、高齢、障害、子育てなど縦割りの福祉制度が、困難の多様化に対応しきれていないことがある。親の介護と子育ての「ダブルケア」、知的障害者と同居する親が認知症になってしまった場合などだ。どこに相談すればよいか分からず迷っているうちに、深刻な状況に陥る可能性がある。

 近所づきあいが希薄になり、困っている人がいても周囲が気づかず、支援が遅れることも珍しくない。

 地域福祉に詳しい高橋紘士・元立教大教授は、「隙間のない包括的な相談支援は、今後ますますニーズが高まるだろう。課題は、専門職員の人件費の捻出だ。自治体だけでなく、税制上優遇されている社会福祉法人にも、地域貢献事業として積極的に取り組んでほしい」と話している。

 (安田武晴)

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