ジャーナル『Depression and Anxiety』に掲載の研究によると、「幸せにならなければ」という社会的プレッシャーが、うつ症状を悪化させる可能性があるようです。

同論文において、メルボルン大学心理学科のBrock Bastian准教授はこのように述べています。

住んでいるところの文化や社会的環境が、私たちのうつレベルや悪い出来事への対応に重要な影響を及ぼすことがわかってきました。

うつは、ポジティブな感情とネガティブな感情の関係についての認知が高い東洋よりも、米国などの西洋で多く見られます。東洋は西洋に比べて幸福度が低いものの、うつも少ないのです。

うつは、一種の感染症です。ある文化で特に蔓延しているのであれば、各個人の生物学よりも、文化的要素がうつにどう寄与しているかを理解するべきでしょう。

Bastian氏の研究チームは、幸福への社会的期待とうつ症状の関係を調査しました。その結果、幸せへのプレッシャーを感じている人ほど、うつ症状を経験しやすいことがわかりました。

Bastian氏は別の研究において、幸せへの社会的プレッシャーを感じている人ほど、失敗後の反すう思考が多いことを示しています。考えすぎはうつの原因となりうるので、失敗を乗り越えることが重要です。

最近では、ポジティブな感情とネガティブな感情が差別的に扱われています。ポジティブな感情を大事にするあまり、ネガティブな感情を無用なものと考えがちなのです。

でも、ご安心ください。幸せになりたいと思わないようにするための方法はいくつもあるのです。

1. 社会的影響を知る

多くの人は、どれだけ私たちが幸せを押し付けられているかに気づいていません。でも、広告を見るたびに、幸せな人を目にするでしょう。広告主は、ネガティブな表情で商品を売ろうとはしません。彼らは、「もっと働いて、もっと稼いで、もっと物を買うことで、広告の中の人のように幸せになれる」というメッセージを押し付けているのです。

このような影響を知ることで、自らの反応をコントロールしやすくなります。

SNSも注意が必要です。多くの人が、ストーリーの一部始終ではなく、人生の理想的な側面ばかりを見せようとしています。

このように私たちは、幸せにならなければというプレッシャーに常に囲まれています。そして、周囲の人はそれを達成しているように感じてしまいます。本当は、誰もがネガティブな感情を経験しているというのに。

2. 会話を変える

ネガティブな状況でもポジティブな側面に目を向けるという方法は、一見正しいことのように思えます。でも、実際はそれが逆効果になることも。ネガティブになることには、本当は多くのメリットがあるのです。たとえば、より強力で正真正銘の人間関係を築くことができます。

ネガティブな感情を共有すると、関係が強まります。このような絆は、ポジティブな情報を共有しても得られるものではありません。ですから、何もかもをポジティブにとらえ直そうとする必要はありません。嘘をつかず、真実に向き合えばいいのです。

もちろん、常にネガティブではよくありませんが、自分の気持ちに正直になることが重要です。

3. 困難な目標を追求する

幸せに注力するのではなく、使命感を与えてくれる目標を定めるべきです。

幸せな人生には、ネガティブな出来事が付き物です。私たちは、自分に試練を与える必要があります。厄介な困難にも立ち向かわなければならないのです。その結果、幸せを手にすることができますが、得られるものはポジティブな感情だけではありません。

筋トレと同じで、目標達成までには相応の努力が必要ですが、達成感を得ることができます。

目標に向かって突き進むには、いくつかに絞って、それを小さくて達成可能な目標に分割します。進捗を記録するためのアプリも多く出ています。しかし、もっと重要なことは、何かに向かって努力するプロセスを楽しむこと。

4. 利他の精神を持つ

周囲の人は、あなたの幸福度に大きな影響を与えます人間関係が期限切れになることも時にはありますが、相手へのアプローチを変えるだけで関係が改善できる場合がほとんどです。

相手が自分をどれだけ幸せにしてくれるかという基準で判断するのはやめましょう。人間関係は、利己的ではいけません。

幸せになることを目標にすると、人間関係が自己中心的になってしまいます。それは、あまりにも浅はかです。

自己犠牲と利他の精神を持つことで、もっと充実した人間関係につながります。

有意義な人間関係を見つけるためには、自分が他者に何を提供できるかを理解することが何よりも重要です。そのためには、自分の道を外れ、やりたくないことをやらなければならないことも多いでしょう。

SNSでは、自分と他人を比べたり、いいねの数に振り回されたりしがちです。それよりも、他者との深い関係を築くためのツールとしてSNSを利用しましょう。

本当の人間関係を、ローカルでもグローバルでも育まなければなりません。SNSは、コミュニケーションを続けるうえでとても有効です。

5. 悲しむ

幸せになるためのアドバイスの多くは、ポジティブになることを勧めています。でも、無理にそれをしようとすれば、余計に苦しむことになるでしょう。それよりも、悲しみを受け入れ、悲しいときは悲しむことを自分に許してあげてください。悲しみに向き合うには、悲しい曲を聞いたり泣いたりといった、たくさんの方法があります。

感謝の日記を捨てる必要はありませんが、ネガティブな感情も無視しないでください。

何に対しても感謝できないときもあります。自分のことをポジティブに考えられないときもあります。それを受け入れることは、感謝を受け入れることと同じくらい重要なのです。

それに、不機嫌になることには、記憶力向上など多くのメリットがあります。