このたび、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の内田裕之専任講師は、北米、ヨーロッパ、アジアの統合失調症研究の専門家とともに、統合失調症の治療で使用される抗精神病薬の長期的な効果と安全性を検討し、その安全性・有用性・課題点を明らかにしました。
近年、抗精神病薬の使用により、長期的には統合失調症の症状が、逆に悪化するという報告が散見され、その使用の妥当性が議論の的になっていました。
そこで、研究グループでは、抗精神病薬の治療効果、脳に対する影響に関する過去の報告を吟味し、その有用性と安全性を再検証しました。
その結果、抗精神病薬の使用は症状を改善し、その後の再発を防ぐのに有用であることが改めて明確に示されました。一方で、一部の患者では抗精神病薬の中止または減量が治療として適切である可能性があり、今後、各患者に合った治療法をみつける研究が必要であるとの結論を見出しました。また、抗精神病薬が脳の萎縮に与える影響は確定的な知見は得られず、今後のさらなる検討が必要であると結論付けました。
この検証結果を統合失調症の患者とその家族に周知することで、抗精神病薬の効果に対する“誤解”を解くと同時に、課題点も明らかになり、統合失調症の治療の今後の方向性を提示したと考えます。
これらの研究成果は2017年5月5日、アメリカ精神医学会が発行する「American Journal of Psychiatry」に掲載されました。
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