2017.04.18 | ニュース

認知症予防にはビタミンEとセレンのどっちがいい?

足掛け14年の研究

from JAMA neurology

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抗酸化物質が体に良いという説があります。ビタミンの補充でアルツハイマー病を予防できるかを調べた研究が実際にあります。2002年から2015年まで対象者を追跡した結果が報告されました。

アメリカのケンタッキー大学などの研究班が、ビタミンEとセレンのサプリメントにより認知症を予防できるかを調べた研究の結果を『JAMA Neurology』に報告しました。

この研究は、もともとビタミンEとセレンが前立腺がんを予防できるかを調べるために2002年に始まって、参加者が長年サプリメントを飲み続けていたものです。

ビタミンEとセレンはともに抗酸化物質です。研究開始当初は、前立腺がんに予防効果があるのではないかと考えられていました。

同時に、脳の酸化ストレスが認知機能に悪影響を与えるのではないかという仮説から、認知症についての調査も行われていました。

認知症のない60歳以上の男性7,540人が参加しました。参加時点の年齢は平均67.5歳でした。参加者はランダムに4グループに分けられました。

  • ビタミンEとセレンを飲むグループ
  • ビタミンEと(セレンの代わりに)偽薬を飲むグループ
  • (ビタミンEの代わりに)偽薬とセレンを飲むグループ
  • 2種類の偽薬を飲むグループ

2008年に当初目標とされた前立腺がん予防効果がないことがわかり、参加者はサプリメントを飲むのをやめました

新しく報告された内容は、サプリメントをやめてからも参加者を追跡調査し、長年のうちに認知症の予防効果が現れるかどうかを調べた結果です。2015年まで追跡を続けて得られたデータが解析されました。

 

ビタミンEとセレンの効果について次の結果が得られました。

参加者の人口統計学的情報およびベースラインで自己申告された併存症によって発生率を調整したCoxモデルから、偽薬と比べてビタミンEについてハザード比は0.88(95%信頼区間0.64-1.20)、セレンについて0.83(0.60-1.13)、組み合わせについて1.00(95%信頼区間0.75-1.35)と算出された。

ビタミンEを飲んだグループでも、セレンを飲んだグループでも、両方を飲んだグループでも、認知症の発生率は偽薬を飲んだグループと統計的に差がありませんでした。

研究班は「どちらのサプリメントも認知症を予防しなかった」と結論しています。

 

ビタミンEとセレンが認知症を予防しないという結果を紹介しました。抗酸化物質だから効くかもしれない、という仮説は成り立ちませんでした。

この1件の研究ですべての抗酸化物質が否定されるわけではありませんが、ほかの抗酸化物質に、あるいはほかの病気に対して効果があると考えるためには、ビタミンEとセレンがどちらも認知症を予防しないことに説明をつける必要があります。

人体は複雑です。何かが「体にいい」という考えが理論としてもっともらしく思えても、試してみると期待したほどの効果が現れないということはよくあります。実際に試した結果が大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Association of Antioxidant Supplement Use and Dementia in the Prevention of Alzheimer's Disease by Vitamin E and Selenium Trial (PREADViSE).

JAMA Neurol. 2017 Mar 20. [Epub ahead of print]

[PMID: 28319243]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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