認知症施策、「本人の集いの場ある」自治体の56%
認知症の施策づくりに当事者の声を生かすため「本人たちが集まり、自らの体験や必要な支援を話し合う機会がある」とした市区町村は約56%に上ることが17日、高齢者問題を研究する国際長寿センター(東京)が実施した初の自治体調査で分かった。回答があったのは869自治体。これまでの施策は家族や支援者の視点に偏りがちだったが「本人重視」に変わりつつある。
政府は2015年に策定した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で「当事者視点の重視」を掲げ、保健師らが生活実態や希望する支援について、本人から聞き取り調査をしている。
しかし「認知症の人は意思表示ができない」と周囲が思い込み、家族や支援者が代わりに答えるケースもある。専門家からは「本人調査とは名ばかりだ」との指摘が出ていた。
こうした中、認知症の人が互いに本音を打ち明けられる機会が増えている。同センターが昨年12月~今年1月、全市区町村の担当者に尋ねたところ、約半数の869自治体から回答があり、このうち当事者が必要な支援を話し合う場があるとしたのは490自治体(56.4%)だった。設置しているのは自治体の他、本人や家族の自助グループ、介護事業所、医療機関など。
センターはこのほか全国10カ所で実施状況を調査。仙台市では認知症の当事者自身が企画、運営を担い、医師や行政担当者らがオブザーバーとして参加し、ニーズに合わせた支援策づくりに生かしている。「親や家族の前では申し訳なくて、悩みを打ち明けられなかった」(静岡県富士宮市)との声も聞かれた。
調査に関わった認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長は「本人が意見表明できる場を設けるだけでなく、政策決定プロセスに参加できるような仕組みが必要だ」と話している。〔共同〕