Inc.:身体とをもっと健康にしたいと思っている人に向けた、科学的なアドバイスはたくさんあります。「もっと運動をしなさい」ということは、無数の研究で主張されています。「マルチタスクをやめなさい」「全粒穀物を食べなさい」なんてこともよく言われます。

もちろん、それらはどれも価値のある研究結果ですから、そうしたアドバイスに従うほうが賢明です。でも、正直になりましょう。積極的に外出して、律儀にキヌアを買う人や、ジムのスピンクラス(エアロバイクマシンを使う激しいレッスン)に申し込む人もいるかもしれませんが、この手のアドバイスはどれも、必ずしも楽しくて飛び跳ねたくなるようなものではありません。

けれどもそうした状況は、オーストラリアの栄養学者Georgina Crichton氏のチームが行った最新の研究のおかげで、がらりと変わるかもしれません。この研究は、「メーン・シラキュース長期研究」と呼ばれる、数十年にわたって1000人近くを対象に、ライフスタイルに関連する要因や健康上の影響を追跡している大規模な研究で得られたデータを分析したものです。2001年から2006年にかけては、被験者の食生活に関する詳しい情報も集められました。その膨大な数字を掘り下げたCrichton氏のチームは、いったいどんなことを見つけたのでしょうか?

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他のライフスタイル上の影響因子を調整し、慎重に分析した結果、Crichton氏の研究チームは、まさに驚くべき食品が、精神機能を大幅に向上してくれるらしいことを発見しました。その食品とはチョコレートです。

そうです、読みまちがいではありません。食物繊維やケールのような、効果は高いけれど心が躍らない食べものではなく、ほっぺたが落ちるほどおいしい、あのチョコレートです。研究チームは実際に、巷にあふれるチョコレートをもっとたくさん食べるよう勧めています。

では、チョコレートをたくさん食べると、具体的にはどのような効果があるのでしょうか? Crichton氏らの研究では、週に1回以上のチョコレート摂取と、「視覚空間記憶(と構成)、作業記憶、スキャニングやトラッキング、抽象的推論、ミニ・メンタルステート検査の結果」の向上との間に相関があることがわかりました。つまり、どうやらチョコレートには、脳のはたらきを良くする効果があるようなのです。

しかも、これはただ単に、賢い人がチョコレートをたくさん食べているということではありません。その後の追跡調査では、チョコレートの摂取量が増えると認知機能が向上することが確認されたのです。つまり、その逆――認知機能が高いとチョコレートの摂取量が増える――のではない、というわけです。

脳がチョコレート好きな理由

チョコレートを食べると、脳にそうした良い影響が出るのはなぜでしょうか? 100%確かなことは、誰にもわかりません。今後さらなる研究が予定されていますが、Crichton氏の研究チームは、「ワシントン・ポスト」紙にいくつかの仮説を提示しています。

「カカオフラバノール」と呼ばれる成分は、天然のカカオに含まれるもので、したがってチョコレートにも含まれます。この成分が、「ヒトの脳に良い影響を及ぼしているようだ」と論文には書かれており、先行するいくつかの研究も引用されています。「チョコレートには、コーヒーやお茶と同じく、メチルキサンチンも含まれている。これは植物由来の化合物で、身体のさまざまな機能を高める効果がある」とも述べられています。

とはいえ、食べすぎは禁物

この研究のおかげで、チョコレート好きの人たちは、今後は罪悪感を覚えずに好物を心ゆくまで楽しめそうです。ただし、だからといって調子に乗って食べすぎてはいけません。チョコレートを愛するあまり、誘惑に負けて食べすぎてしまいかねない人たちに向けて、Crichton氏は「もちろん、チョコレートの摂取は、全体として健康的な食事パターンの範囲内に収まるようにするべきです」と釘を刺しています。

今回の研究は、チョコレートを手あたりしだい、口いっぱいに頬ばっても良いという科学的なお墨付きを与えるものではありません。とはいえ、とてもスイートな研究結果だということに変わりはありません。ですから、あの罪深いお菓子を、どうか遠慮なく楽しんでください。実際のところは、それほど罪深いわけでもなさそうなのです。

Eating More Chocolate Might Make You Smarter, New Study Suggests|Inc.

Jessica Stillman(原文/訳:梅田智世/ガリレオ)

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