2016.08.07 | ニュース

引きこもりの20歳男性がジョギングで脳の血流を改善させた結果

自治医大からの症例報告

from Clinical practice and epidemiology in mental health : CP & EMH

引きこもりの20歳男性がジョギングで脳の血流を改善させた結果の写真

引きこもりは本人に自覚があってもなかなか変えられないことがありますが、医学的なサポートの方法は確立していません。自治医科大学の研究班から、引きこもりで入院した20歳男性が3か月のジョギングで改善した例が報告されました。

◆hikikomoriとは?

ここで紹介する報告には、中学生のころからの引きこもりで入院した20歳男性の経過が記されています。

研究班は、英文の報告の中でhikikomoriという言葉を「深刻な社会からの撤退」と説明しています。引きこもりには薬が効果を表す場合もありますが、完全な解決にはなりません。

 

◆入院して抗うつ薬治療を開始

報告されている男性は、引きこもりの治療のため家族に説得され、本人同意のもとで入院しました。

検査の結果、社会不安障害と軽度の精神遅滞と診断され、抗うつ薬の治療が開始されました。

抗うつ薬で若干の効果が現れました。

 

◆ジョギングで脳の血流が改善

入院して1か月半から、週に3回、病院の周りを30分研修医と一緒にジョギングする運動療法が始められました。

ジョギングを始めて3か月ほどで社会不安、自信欠如などの改善が見られました。

脳の血流を測定する検査では、両側側頭葉の血流が増加していました。

入院144日で退院となり、工場で働き始めました

研究班は「精神疾患の運動療法について、うつ病に対する運動療法の効果は多くの研究で報告されてきたが、この症例は運動療法の適用可能性はうつ病に限られていないことを示唆した」と述べています。

 

誰にでも当てはまる治療とはいえないでしょうが、体を動かすことで気持ちが前向きになる人もいるのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Jogging Therapy for Hikikomori Social Withdrawal and Increased Cerebral Hemodynamics: A Case Report.

Clin Pract Epidemiol Ment Health. 2016 Apr 29.

[PMID: 27346999]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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