Popular Science:長期的なストレスは、慢性的な筋肉の緊張、心疾患、男女両方に生殖能力の問題が発生するなど、身体に大きな影響を与える可能性がありますが、恒常的なストレスが、それとはまた別の影響を脳に与えるかどうかを明らかにする目的で、ネズミを対象に新しい研究が行われました。それは、ストレスによる脳の炎症が記憶喪失や鬱病につながることを確かめるための研究で、『Journal of Neuroscience』誌に最近発表されました。その研究では、数匹のネズミがいるケージに、定期的に攻撃性の高いネズミを入れてストレスを与えました。その状態を6日続けた結果、ストレスを受けたネズミたちは、危険なときに逃げ込む穴の位置が思い出せなくなっていました。ストレスが与えられる前なら容易に記憶できていたことです。オハイオ州立大学脳神経学教授で研究者の1人であるJonathan Godbout氏は「ストレスを受けたネズミは穴の位置を思い出せませんでしたが、ストレスがないネズミはしっかり記憶していました」と発言しました。それらのトラウマから4週間後、ネズミたちはケージの隅で縮こまった状態になりました。これはネズミの社会的回避であり、鬱病の典型的な症状です。

ストレスがネズミの海馬に影響を与えたのではないかと研究者たちは推測しています。海馬とは脳の中で記憶と空間認識の鍵を握る部分です。ネズミの海馬にある免疫システムからマクロファージ(大食細胞)と呼ばれる細胞が発見され、マクロファージが脳細胞の増加を阻止していることがわかりました。

どうやら、ストレスのせいでネズミの免疫システムがネズミ自身の脳を攻撃して、炎症を発生させているようでした。炎症を鎮める薬をネズミに投与して反応を見ると、社会的回避状態と脳細胞の劣化は継続しましたが、脳内のマクロファージは減少して記憶力が正常に戻りました。これは、恒常的ストレスが神経に与える影響の裏には脳の炎症があることを示しています。

恒常的ストレスと記憶喪失の関係、あるいは炎症と鬱病の関係を指摘する研究は、これが初めてではありません。しかし、今回の研究は、これら4つが確実に結びつくことを新たに示しています。これらの研究が進めば、不安症や鬱病を治療する際には、もっと免疫力に焦点を当てた処方をすることになるかもしれません。現在、その治療方法が一部テスト段階にあることが『New Scientist』誌で報告されています。

STRESS COULD BE DESTROYING YOUR BRAIN ― HERE'S HOW|Popular Science

Alexandra Ossola(訳:春野ユリ)

Photo by Shutterstock.