2015.11.14 | ニュース

認知症が起こると、生存に影響はあるのか?

オランダの研究班が59,201人のデータを解析

from BMJ open

認知症が起こると、生存に影響はあるのか?の写真

日本では認知症患者が2020年には325万人になるという予測があります。認知症は生活を大きく変えてしまいますが、生命に影響はあるのでしょうか?オランダの研究班が59,201人のデータを解析し、5年内の死亡率が約60%と報告しました。

◆59,201人のデータを解析

認知症の患者さんの長期研究には、信頼度の高い登録・追跡システムが必要です。このようなシステムが整っているオランダで、平均年齢81.4歳の対象者59,201人のデータを解析しました。

 

◆認知症による入院の死亡リスクは心筋梗塞に劣らない

解析の結果、認知症と診断されてから5年以内の死亡率は、男性が65.4%で女性が58.5%でした。認知症で入院した患者さんは、1年内の死亡リスクが通院の患者さんより3.29倍高いという結果でした。一般集団と比較した1年以内死亡リスクは通院の男性で3.94倍高く、この傾向は若い人で著しく見られました。論文は、「認知症があり入院した患者さんのリスクは心血管疾患の発症後より高い」と結ばれています。

 

◆早期発症ほど高リスク

認知症の患者さんの生存率がよくないことは以前にも報告があり、2001年にはカナダの研究班により同様の結果が発表されていますが、今回はその時の5倍の規模での報告です。

日本では、これほどの規模ではありませんが、診断時平均79.8歳の2,000人を対象とした調査では、診断後生存期間中央値(半数の人が生存した期間)は5.8年でした。この調査では女性の場合は90歳になると認知症による死亡率上昇はなくなる[1]、としており、認知症の影響は早期発症ほどわるい、というここでの結果と一致しています。

認知症が誤嚥性肺炎や転倒による頸部骨折を経て死亡リスクになりそうですが、ワクチンの接種や日々のケアが整った環境ではどうなのでしょうか。今後日本でのより詳細な報告が待たれます。

[1]北村立, 細井悦子, 倉田孝一(2009年).「認知症診断後の生存期間について ―石川県立高松病院での調査から―」老年精神医学雑誌20(2), 191-198

 

参考文献

Prognosis of patients with dementia: results from a prospective nationwide registry linkage study in the Netherlands.

BMJ Open. 2015 Oct

[PMID: 26510729] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26510729

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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