児童虐待相談に国家資格、厚労省有識者委が見解
児童虐待の防止策を議論する厚生労働省の有識者委員会は12日、虐待問題の深刻化を踏まえ、新たに国家資格を持つ専門相談員を設けるべきだとの見解をまとめた。児童相談所の負担軽減に向け、通報の緊急性に応じて警察、児相、市町村などに対応を振り分ける仕組みが必要との考えも示した。
有識者委は年内に児童虐待防止策に関する報告書を取りまとめる。これを受け、厚労省は児童福祉法や児童虐待防止法などの改正案を早ければ来年の通常国会に提出する。
有識者委が新設を求めた国家資格は「子ども家庭専門相談員(仮称)」。児相では現在、主に児童福祉司が虐待問題に対応している。児童福祉司は国家資格の医師や社会福祉士などのほか、大学で心理学や教育学を学んだ後に児相の業務に1年以上従事するなどすれば、自治体から任用資格を得られる。
有識者委は深刻化する虐待問題に対応するため、児童福祉司とは別に、より高い専門知識や技術を持つ専門相談員が必要とした。医療福祉関係の国家資格を持ち、児相で5年以上の実務経験を積んでいることなどが条件で、国家試験に合格する必要がある。3年後をメドに運用を開始したいとした。
また、児童虐待に関する通報、相談を24時間受け付ける全国共通ダイヤル「189」の受付窓口を、現在の児相から、都道府県や政令市に新たに設ける組織に変更。新組織が緊急性などを判断し、警察、児相、市町村などに対応を振り分ける仕組みを導入するよう求めた。
児童福祉法で定める、虐待を受け養育支援が必要とする子供の年齢を現行の18歳未満から20歳未満に引き上げることも提言した。現在は18歳になると原則、児童養護施設などから出なければならないが、就学中など自立が難しい場合も多く、見直しが必要との指摘が出ていた。
厚労省によると、全国の児相が14年度に受けた相談件数は約8万8900件(速報値)で、過去最多となった。13年度の相談件数約7万4千件のうち、実母が加害者のケースが54.3%の約4万件で最多。子供の年齢は小学校入学前が42.5%を占めている。同年度の虐待死の子供は69人で、うち心中以外の身体的虐待やネグレクト(育児放棄)などが36人を占める。