「娘は助けを求めていた。救ってあげられなかったのが私の一番の罪です」。精神疾患の長女=当時(41)=の首を絞めて殺害したとして殺人罪に問われた和歌山市の男性(81)の裁判員裁判で、和歌山地裁は7月、男性に懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役6年)の判決を言い渡した。公判で明らかになったのは、精神疾患で苦しむ長女と、愛する長女の暴力に耐え続けた家族の姿。被告席の男性と証人出廷した妻は法廷で最後まで長女に謝り続け、傍聴席ではすすり泣く声も聞かれた。(兵頭茜)
「被告を強く非難することはできない」
判決によると、男性は2月14日午後10時20分ごろ、自宅で同居する長女が病身の妻を布団越しにたたくのを見て殺害を決意。長女の背後から首に電気コードを巻き付けて殺害した。
公判で、検察側は「被告人に同情の余地は一定程度あるが、被害者と距離を置くなど殺害以外にも方法があった」と指摘し、「強い殺意を持ち、犯行態様は軽くない」として懲役6年を求刑した。
一方、弁護側は「長女は暴れて被告やその妻に暴力をふるっていた。精神的にも体力的にも限界に達していた」と主張。「重い精神障害のある娘の面倒を長年見るにあたり、肉体的にも精神的にも限界に達していた。犯行を後悔しており、高齢である」として執行猶予付きの判決を求めた。