日本の議論

毒母とのバトル「命がけで自分の理想像、押し付けられ」…女たちの苦闘

 母と娘の関係がここ数年、注目されている。母親との確執をつづった女性有名人の半生記も相次いで出版された
 母と娘の関係がここ数年、注目されている。母親との確執をつづった女性有名人の半生記も相次いで出版された

「実の母が重い」。母と娘との愛憎渦巻く関係がここ2、3年、注目されている。母との確執を告白する女性芸能人らの半生記が続々出版されたほか、親が子供に毒のような影響を及ぼす「毒親」「毒母」という言葉も使われるようになった。血を分けただけに、義理の関係の嫁姑問題より深刻だともいわれる母と娘の確執の裏に何があるのか。

「あなたが生まれてこなければ」

「実は、うちも『毒母』なんです。母と会ったのは、この15年で3回だけ。最後は4年前、母のがんの手術に保証人として立ち合ったとき。あの人に近寄ったら大変です」

東京都台東区の女性会社員(44)はこう話す。

「母は自分のことは自分で決めなさいといいながら、私がこうしたいというと反対する。服装に口出ししたがり、ジーンズは禁止。でも、服と進路のこと以外は関心がなく、気分次第で干渉してくる」

地方の商家の末娘として生まれた母親(71)は、「女の子に学は要らない」との方針で育てられ、商業高校を卒業して料理や洋裁を学んだ。学歴にコンプレックスがあるのか、女性の進路に干渉し、女性は中学3年のとき、受験のため部活動をやめるよう強いられたという。

自身は3人きょうだいの一番上。大学進学を機に実家を出たが、いわゆる「できちゃった婚」だった父母が50代で熟年離婚したとき、母親は月に何度か長電話をかけてきて父親について愚痴をこぼした。その揚げ句、「あなたが生まれていなければ」といわれ、母親との関係修復は困難になった。その後も、実家から母親の時計や貴金属を持ち出したぬれぎぬを着せられ、「この盗人!」と罵倒された。翌日、実家内で見つかり、母親からわびの手紙が届いたが、無視している。

こうした母と娘の確執の存在が広く認識されたのは平成25年頃だ。芸能人らが母との関係を軸に自らの生い立ちを赤裸々につづった半生記の出版が増えた。中には摂食障害などの精神疾患を伴う重いケースもある。

例えば、女優の遠野なぎこさん(35)はこの年、自著「一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ」(ブックマン社)を刊行して話題になった。「母に愛情をぶつけては、かわされる」と書き、長年苦しんできた摂食障害が始まったのは太らないために食べて吐くことを母親から教わったのがきっかけだったことを明かしている。

母と娘の関係がやっかいなのは、愛情が絡んでいることもあるようだ。

トップモデルとして世界的に活躍した冨永愛さん(33)は昨年発売の自著「Ai 愛なんて 大っ嫌い」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で、「母の身勝手さに対する嫌悪感と、それでもわたしたち姉妹を手放さなかった母への愛着。その両方にはさまれて、こどものころのわたしの母に対する思いは複雑だった」と書いた。

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