日本の議論

虐待に追われる児童相談所 養子縁組に手が回らず 実親記録の保管も不十分

 生みの親が育てられない乳幼児と、血縁関係のない大人が法律上の親子関係を結ぶ「特別養子縁組制度」。国が制度を推進する一方、平成25年度に縁組を仲介した児童相談所(児相)は全体の約6割にとどまることが厚生労働省研究班の調査で分かった。また、3割近い児相が、実親などに関する記録を一定期間後に廃棄していたことも判明。調査からは、虐待対応で仲介に手が回らないうえ「出自」を知る権利も十分に保障されていない実態が浮かび上がった。

低調な児相の実績

 特別養子縁組制度は昭和63年から開始。養子は6歳未満、養親は結婚した夫婦で25歳以上が原則とされる。「普通養子縁組」とは異なり、成立すれば養親の実子として戸籍に記載され、実親との親子関係がなくなることが特徴だ。児相のほか、都道府県に届け出をした民間団体・個人が仲介やあっせんを行うことができる。

 この特別養子縁組について、厚労省研究班(代表は林浩康日本女子大教授)が初めて全国調査を実施。昨年8~9月、全国207の児相を対象に質問を郵送し、197の児相から回答を得た(有効回答率約95%)。

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