精神疾患患者の通院をめぐり、都内自治体の福祉事務所が特定医療機関の囲い込みの場として利用されていた疑いが23日、明らかになった。「通院をやめたら生活保護を打ち切るといわれ、続けざるをえなかった」。約6年前、福祉事務所を通じ、区が契約するクリニックを紹介された都内の20代男性が、その実態を証言した。
男性は平成21年ごろ、体調不良で職を失い、都内のある区の福祉事務所へ生活保護の相談に行った。相談員から「学校のようなところへ行ってもらう」と言われ、相談員同行のもとで連れて行かれたのが、区が契約するクリニックだった。相談員がクリニックの職員だったことは後日、分かったという。
診察後、担当者からは病名を告げられなかったが「毎日来るように」と言われた。クリニックでは午前10時過ぎから夜まで、ボードゲームやクロスワード、塗り絵などをするだけ。同じフロアの患者は20~30代が多く、ほとんどが生活保護を受けていた。「ろくに診察もなく、スタッフは居眠りをしていて、何か相談しても『自分で考えましょう』と言うだけだった」。疑問を感じた男性は、間もなく通院を中断した。