Crew:これを読んでいるあなたはおそらくちゃんとした大人でしょうから、ほとんどの人と同じように、自分の仕事もプライベートもより良くしたいと思い、どうすればそうできるか考えていることだと思います。しかし、これまたほとんどの人は、家に帰ると仕事の目標に向けてがんばるのは二の次で、テレビの前にどっかりと座って飲み食いしています。

かなりの時間テレビを見ていたことに気付くと、罪悪感でやり切れなくなるかもしれませんが、最近の研究によると、そんな時間の無駄に思えることが実は有益だということがわかりました。再放送のテレビを見たり、テレビゲームで遊んだり、RPGをすることすら、精神衛生上良い影響を与えていたり、個人の成長につながっているのです。

今回は、最近の研究でわかった、時間の無駄に思えるけれども実はそうではないことについてご紹介しましょう。

再放送を見ると心のエネルギーが回復する

人には誰しも、何度も繰り返し見てしまうテレビや映画があるでしょう。バッファロー大学の研究によって、お気に入りの番組の再放送を見るのは、つまらないどころか心のエネルギーを回復することがわかりました。自制心や意思力には限界があるという考え方と関連しているかもしれませんが、友だちとオンラインゲームをするより、重要な仕事をすることのほうがエネルギーを使い果たしてしまうという説があります。

バッファロー大学の研究チームの主任であるJaye Derrickさんは、「十分な時間があれば精神的なエネルギーは回復しますが、もっと早く回復する方法がありそうだ」と言っています。Derrickさんは、好きなテレビ番組や映画を再び見ると、お気に入りの登場人物との擬似的人間関係に心地よさを感じるため、精神的なエネルギーや意志力が回復すると言っています。

同じテレビ番組をまた見るのは、精神的なエネルギーをまったくと言っていいほど使いませんが、番組の出演者や登場人物と過ごす時間を楽しむことができます(一方で初めて見るテレビ番組だとかなり批判をすることもあります)。疲れ果ててエネルギー不足になった心には、そのことから得られる楽しみや喜びによって、より素早く精神的なエネルギーや意志力を取り戻すことができます。

テレビゲームをすると論理的思考力や問題解決能力が高まる

どんなテレビゲームをやっているかに関わらず、テレビゲームをすることで論理的思考力や問題解決能力が向上するということが、数々の研究で示唆されています。米国心理学会が調査したいくつかの研究の中で、テレビゲームをすることで子どもの論理的思考力や問題解決能力だけでなく、記憶力や空間ナビゲーションのような認識能力も強化することがわかりました。

驚くべきことに、中でも特にシューティング系のゲームをしている時に、被験者の精神的な能力が高まっていることがわかったのです。この手のゲームは、認知能力を伸ばす教育プログラムと同じように、3Dの空間で対象について考える能力を伸ばします。

子どもの認知能力の発達には限界がありません。別の研究では、大人がテレビゲームをやっても、論理的思考力や問題解決能力を伸ばすことができ、情報処理スピードを速くすることもできるかもしれないと言っています。ある研究では、ゲームをやっている外科医は、やっていない外科医よりも、ある種の手術をする能力に長けていることまでわかっています。

RPGを利用してリーダーシップを学ぶ

さらに、テレビゲームの中でもMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)をすると、特に指導力が伸びることがわかりました。

MMORPGで勝ち抜くための大きな要因は、問題解決能力、チームとの協調性、そてに戦略的な計画性です。調査によると、この手のゲームをやっている人は、ゲームの世界のみならず会社でもこの能力を利用し、良い社員となることがわかりました。

米KotakuでKate Coxさんは、時間通りに集合すること、他のチームメンバーと協力し合うことなどをゲームから学び、現実世界でも時間通りに出社し、協調性を持って働くことができるようになると書いています。

未体験の感情を求めてライブRPGをする

150415_larping.jpg

ライブRPG(もしくはLARP)はご存知でしょうか? 即興に近いかたちの、脚本なしのリアルなロールプレイングゲームという感じのものです。参加者は実際にRPGのゲームのキャラのコスプレをして、ゲームの世界の住人になりすまします。

ライブRPGに関する本『Leaving Mundania: Inside the Transformative World of Live Action Role-Playing Games』の著者Lizzie Starkさんは、ライブRPGの参加者は今までとは違う自分の感情を見つけることがあると書いています。

「Psychology Today」の記事ではStarkさんは、感じたことのない感情を体験したいという願望も、今日のライブRPGの人気を生んでいるのではないかと説明しています。ライブRPGをやりたいという人は、戦いのスリルを味わいたい、ロマンチックな物語の世界を生きてみたい、友だちを失う体験をしてみたいという人が多いです。実際、どれも日常生活ではなかなか味わうことのない感情や経験です。

人間のEQ(こころの知能指数)は、意思決定の過程から他人に感情移入する能力まで、あらゆるものに影響しているので、ライブRPGは自分の感情とつながる素晴らしい方法になります。

野外で戦うのは趣味じゃないという場合も、他の形態のRPGが感情に有益な影響を与えることは注目に値するのではないでしょうか。心理学者は、他人になりすまさなければうまく話せないクライアントに対処するために、何十年もロールプレイングの手法を使ってきました。非日常的なシナリオを演じることで、クライアントが自分の感情ややる気に何かしらの気付きを得るのを、心理学者は助けやすくなります。

どんな役柄を演じているかに関わらず、視点が変化することで、感情的に健康になり、洞察力が持てるようになることを知ると自信になります。

笑うことの恩恵を受ける

テレビのお笑いやバラエティ番組でも、YouTubeの猫動画でも、笑うことであらゆるストレスが癒され、免疫システムを高めることが、研究で証明されています。

オックスフォード大学の研究では、笑うことは痛みに対する効果的な治療になることもわかっています。研究者は、一連の実験の中で、お笑いのライブやテレビ番組を見た被験者は、見ていない被験者よりも、痛みに対する耐性が高いことを発見しました。さらに、笑うことで鎮痛剤を服用したのと同じような効果があることも、実験でわかりました。笑えば笑うほど痛みを感じなくなるのです。これは、笑うことで、脳が陶酔感をもたらし痛みを麻痺させるエンドルフィンを放出するからです(同じくストレスホルモンコルチゾールの 血中の値も低くなっています)。

当然ながら、1日のうちに数時間は、シャワーを浴びたり仕事をしたりするのに、テレビやパソコンから離れることになるはずです。しかし、仕事が終わった後のほとんどの時間をくだらない笑いやバラエティ番組に費やしたいと思ったとしても、ほかのことで時間を潰すよりもマシかもしれません。

人間誰しもリラックスしたり、ボーっと何もしなかったりする時間が必要です。四六時中忙しく生産性高くいようとすると、すぐに燃え尽きて疲弊してしまいます。私は、常に自分を高めようとする姿勢には大賛成ですが、時々は無駄な時間を過ごすことも必要だと認めなければなりません。

ここで大事なのは節度を守ることです。どんな活動にしろ、1週間ぶっ続けでやることにメリットはありません。そうではなく、一見"無駄"に思える時間を、心身の健康を保つためのバランスとして、生活に取り入れましょう。

テレビゲームをしたり、大好きなドラマの再放送を見たり、ライブRPGを楽しんだり、自分がこの時間は無駄なことをすると決めたら、それに対して罪悪感を抱いてはいけません。どんな人でも、時々はそんな非生産的な時間を持ってしかるべきです。

The most productive ways to waste your time|Crew

Kayla Matthews(訳:的野裕子)

Image credit: Shutterstock,Ran Yaniv Hartstein