暮らしに満足できるかどうかは「住む街と性格が合うか」に影響される:研究結果

生活満足度の1/3は、「その地域が、住む人の性格に合っているか」に影響されるという研究が発表された。ロンドンの各地域によって住民の性格に違いがあり、また、性格によって生活満足度に差があるという。

ある街に暮らすかどうかを検討するときには、その地域の住宅費や人口密度、犯罪発生率といった要素に目が向けられることが多い。こうした「暮らしやすさ」の要素が、住民の生活満足度の高さと結びついているからだ。

ところが、先ごろ『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』誌に発表された研究論文によると、上記のような「暮らしやすさの要素」は、生活満足度全体の2/3を占めるにすぎない。実際には満足度の大きな部分を、ある意外な要素が構成しているという。それは、「住む人の性格と、その地域との適合性」だ。

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「例えば、文化の多様性に富んだ地域は、『異なる生活習慣や食習慣への探求心が強い住民』の満足感を高める。一方で、『慣れ親しんだ社会の伝統に沿って生きることを好む住民』の場合、そうした地域は、不安感や不快感を増大させる可能性がある」と研究チームは述べる。

この説を検証するため、チームはロンドンに住む56,000人のデータを用いた。このデータは、人間の性格と生活の関連性を探るBBCの調査「ビッグ・パーソナリティ・テスト」で収集されたものだ。

同テストでは、参加者の心理学的特性、人口統計学的因子、および郵便区域による居住地情報が調査された。チームはこのデータを基に、ロンドンで生活満足度が最も高い地域と低い地域、ならびにビッグ5と呼ばれる性格モデル(「外向性」「情緒安定性」「協調性」「誠実性」「経験への開放性」)に基づく住民の性格特性を割り出した。

その結果、ロンドン中心部は、住民の「経験への開放性」は高いが「誠実性」は低い地域であり、ロンドン南西部は、「外向性」と「情緒安定性」が高い地域であることがわかった。

一部の性格特性は、都市の地域的特性との適合がみられた。例えば、「経験への開放性」は、収入と就業率が低い地域において高かった。

「情緒安定性」と「外向性」は、以前から生活満足度との関連性が指摘されており、今回の研究でも、住んでいる地域に関係なくその傾向が認められた。これに対し、一部の性格特性は、特定の環境下でしか生活満足度に結びつかないことが明らかになった。

例えば「経験への開放性」が高い人は、「人口密度、住宅費、および文化の多様性が高く、収入と就業率の低い地域」において、より高い生活満足度を示した。したがって、「経験への開放性」が高い人は、活気と多様性に富む地域に住んだほうが幸福と感じやすい可能性があると、研究チームは指摘している。

その一方で、住民の生活満足度が総じて低い地域では、「協調性」と「誠実性」の高い人ほど、平均を上回る満足度を示した。これは、経済的、社会的に困難な状況で暮らす人の場合、比較的恵まれた生活を送っている人に比べて、「協調性」と「誠実性」が生活により大きな影響をもたらすことを示している可能性があるという。

TEXT BY CATHLEEN O'GRADY

TRANSLATION BY TOMOKO TAKAHASHI/GALILEO