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「オキシトシン」を鼻からスプレーすることで、コミュニケーション障害が改善することを実証:日本研究

「自閉症スペクトラム障害」に対して、“愛情ホルモン”ともいわれる脳内分泌物質「オキシトシン」を鼻からスプレーすることで、特に苦手とする対人コミュニケーション障害が改善されることが明らかになった。東京大学大学院の山末英典准教授や渡部喬光特任助教(当時)などのチームは、自閉症スペクトラム障害の成年男性40人を対象とした、二重盲検による臨床試験を行った。患者にはオキシトシンをスプレーで1回、血液中への浸透が早い鼻から投与し、人が話す様子を撮影したビデオ映像を見てもらった。映像の人は笑顔で嫌な言葉を話し、嫌な表情で好意的な言葉を話すなど、表情と言葉をちぐはぐにしたが、心理テストの結果、オキシトシンを投与した患者は、言葉の内容よりも、表情や声色を活用して相手の友好性を判断する回数が増えて、対人コミュニケーションの障害が有意に改善された。これまで低下していた脳の内側前頭前野の活動も回復したという。オキシトシンは脳下垂体後葉から分泌されるホルモンの一種で、子宮の平滑筋収縮による分娩促進や乳腺の筋線維収縮による乳汁の分泌促進などの作用が知られる。このホルモンは分娩後の母性行動や雌雄ペアの安定性、良好な子育てにも関係することが動物実験で確かめられ、近年はヒトでも他者への信頼性や愛情の形成などに関与していることが報告されている。また最近では、オキシトシンの血中濃度が自閉症の患者や虐待を経験した母親などで低いことが報告され、オキシトシンの投与による自閉症などの症状改善や治療薬の開発などが期待されている。2014.01.08 カラパイア

編集部